諦めない男(野良猫との死闘)

近所に人を見ると寄ってくるような人懐っこい猫の兄弟がいる。

そのうちの1匹が、今週はじめから右前足をひきずっていた。

家人が気にして、病院に連れて行こうかと逡巡。

翌日様子を見に行くと、冷たい雨の中、マンションの狭い軒下で縮こまり、悲しげに、弱々しく鳴いている。

家人は決意した。

動物病院に連れて行き、原因を特定し、可能ならある程度治療してもらうのだと。

段ボール箱に暖かい毛布を敷き、箱に投げ入れる。

すぐにくるんと丸まって落ち着いた(ように見えた)。

しかし車に積み込もうとすると、いきなり反旗を翻し脱走。

また元の場所で弱々しく鳴く。

家人は諦めない。

またひっつかんで箱に投げ入れ…!そこで野良猫がまさかの逆襲!

死にものぐるいで暴れる!

うちの可愛い愛猫の暴れ方など比べ物にならない。

家人の手を咬みちぎらんばかりに咬み、引っ掻く!

それでも諦めない男はどれほど痛めつけられても離さず、箱に投入。

しかし深夜の動物病院では、暴れるかもしれないというと、麻酔せねばならないが、病気か怪我かを特定していない段階での麻酔は生命のリスクを伴うというので、諦めない男もここは諦めて帰宅。

いま保護といいつつ、拉致監禁状態2晩目。

今夜は兄弟のもとに帰してやりたいが、生きていけるのだろうか。

しかしそれが野良猫の宿命なのか。

前は家人を見ると、ニャーニャー鳴きながらついて歩くような猫だったのに、拉致監禁してからはニャーともワンとも鳴かず、自分の姿が見えないような隙間に隠れてでてこない。

やはり野良は野良としての幸せがあるのだろうか。