13年前の今日、母が亡くなった。
なくなる8カ月ほど前、膵臓癌のステージⅣ-aといわれた母は、最初は手術も抗がん剤もしないと父と決めていた。
しかしおぼんざめも含めた周囲の気持ちを察して、手術を決断した。
そして手術から5カ月後、息を引き取った。
ステージⅣ-aはおそらく誤診だった。
手術してみると、周囲への浸潤や他への転移もなかった。
手術の際の縫合不全で、消化器官である膵臓の切り口から、消化液がじわじわと滲み出て、周囲の血管、筋肉を溶かした。
強い酸性の消化液が筋肉や血管を溶かすので、腹腔内にそれらを排出する管を挿管し、術後5カ月間、亡くなるまで、体外に排出し続けた。
筋肉や血管を溶かす痛みは痛み止めが効きにくく、あわせて出る熱との苦痛で、意識が混濁したり、子供のように混乱し、ロッカーの中の暗闇や、ティッシュの箱の動物の顔を怖がった。
それでも、意識が混濁していてもしていなくても、いつも家族のことを思いやった。
なんて強くて優しい母だったのだろう。